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スミレの閉鎖花(25) フチゲオオバキスミレ(4)

 今回もフチゲオオバキスミレの開放花の代役でキスミレV. orientalisの蕾です。キスミレも今春山草店で芽生えたばかりのものを2株買い求め、鉢植えにして観察を続けてきました。もともとの産地はどこなのか山草店でも分かりませんでしたが、2鉢とも夏中花を咲かせ、初めて見る可憐な黄花を堪能する事が出来ました。そして結局10月初めに枯れるまでひとつの閉鎖花も着けることはありませんでした。

 写真 1.〜3.は未熟なまだ受粉していない開放花の蕾。写真 4.〜6.はすでに自家受粉が終わっている蕾です。

Img_1835 写真 1.

Img_1836 写真 2.

Img_1837 写真 3.

 前回のナエバキスミレの蕾と同じく、葯はそれぞれ2室に分かれる2個の半葯から成っており、花糸はごく短い。雌蘂の形態もChamaemelanium節共通の特徴を受け継いでいます。

Img_1838 写真 4.

Img_1840 写真 5.

Img_1841 写真 6.

 写真があまり良くありませんが、この蕾ではかなり早い段階で葯が全て裂開しているようです。前回も触れましたがキスミレが閉鎖花をつけるという情報は得られていないのですが、もし本当に自生地で閉鎖花をつけないとしたら、その繁殖はこの蕾に見られるように主に開放花の自家受粉による種子生産に頼っているのでしょうか。北海道のオオバキスミレは今のところ道南・道北ともに閉鎖花をつけないことが分かっていますが、主に地下茎による栄養繁殖で増えていると思われます。フチゲオオバキスミレは地下茎を伸ばさず、もっぱら閉鎖花を含む種子生産で増殖しているようです。

 佐竹・伊藤「日本産スミレ属の分類学的研究 1.閉鎖花について」では研究に用いたスミレの全ての種が閉鎖花をつけたと報告しています。どの図鑑や植物の本を見ても、スミレ類はほとんどが閉鎖花をつけると書かれています。スミレ類ではおそらくはるか遠い昔に様々な種に分化する以前から閉鎖花をつける性質を受け継いで来たのだろうと思います。Chamaemelanium節の祖先も閉鎖花をつけていたのだろうと思います。近縁のキバナノコマノツメやエゾタカネスミレが閉鎖花をつけること、本州のオオバキスミレやシソバキスミレ、フチゲオオバキスミレなどが閉鎖花をつけることから、そう言えるのではないかと思います。そうだとすれば、どのような選択圧のもとキスミレや北海道のオオバキスミレ類は閉鎖花をつけるのをやめたのでしょう。それは本州・北海道のオオバキスミレ類の分布変遷や種分化にも関係していたのでしょうか。夢想がふくらみます。

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