スミレの閉鎖花(8) ヒメスミレ
無茎種ヒメスミレV. confusa ssp. nagasakiensisの閉鎖花です。いずれも園芸店で買い求めた一鉢のものです。成熟して受粉中のものの連続写真3枚。
次いで、未成熟の閉鎖花の連続写真5枚です。
佐竹・伊藤「日本産スミレ属の分類学的研究 2. 無茎群の開花について」(1965)では無茎種20種の開放花の受粉機構についての観察結果と考察が詳細に論じられていますが、最後に要約がまとめられています。
「3.おしべの形態は、大小はあるが各種ともみな同じであるといえる。すなわち、花糸はごく短く扁平である。葯は長い繭形で2個、内向し、それぞれ縦に2室にわかれる。葯隔付属物は広く大きい。おしべ5個は環状にめしべをかこみ、下方の2個には葯隔の変形した脚柱があり、距の中に入っている。脚柱の形や長さは種によって多少相違がある。」
「4.受粉の機構。おしべは熟すと葯隔付属物は黄褐色に発色し、葯が開裂し花粉粒がでてくるが、上方の3個と下方の2個とは熟度の時間的相違があるようである。すなわち、下方の2個は熟度がおそく、新鮮な花粉粒を盛んに放出しているのに、上面の3個では花粉粒は葯内ですべて発芽し短かい花粉管をだして互いにつづりあい、葯の形そのままの塊になって枯渇しかかっているのをしばしば観察した。」
私は春の開放花の顕微鏡写真をまだ撮っていないので、残念ながら比較ができませんので、この論文の「2. 無茎群の開花について」のPlate 1に載っているスミレV. mandshuricaの雄蕊の写真をお借りします。それを見ますと開放花では花糸がほとんど無いに等しいくらい短いのに対して無茎種の閉鎖花ではどの種も細くて長い花糸をもっています。また葯は開放花の写真ではウインナーソーセージのように長く、一つ一つが2室にはっきりと分かれているのに対して、閉鎖花ではたまごに似た短い繭形で、外見からはどうも2室には見えません。
また開放花の上方の3個の雄蕊と下方の2個とは熟度に違いがあるとありますが、「3. 有茎群の開花について」では以下のようなことも書かれています。調べた有茎9種の内7種において花粉の大きさに大小があり、下位2個の雄蕊から出る花粉は上位3個のものより大形であった。このことから下位2個の雄蕊から出る花粉が開放花においても自家受粉に関係が深いのではないかと推測されるというものです。
どうやら、5個の雄蕊に元々役割の違いがあり、閉鎖花において不必要な上方3個の雄蕊の退化に繫がっているようです。
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