スミレの閉鎖花(7) アカネスミレ
順不同ですが、今回はアカネスミレV. phalacrocarpaの閉鎖花です。全部栽培中の1個体から採取したものです。
写真 1.〜3.は同じ閉鎖花ですが、例外的に花柱が伸びています。そのためぽっかり開いた柱頭口の奥に漏斗状の穴が見えています。論文でも1995年の「2. 無茎群の開花について」の中で、スミレV. mandshuricaの柱頭をたてに切開して染色した図が出ています。柱頭口付近は広く袋状になり、徐々につぼまって花柱内の間隙につながっています。種は違いますが閉鎖花の柱頭の構造は変わらないようです。
写真 4.は別の閉鎖花ですが、無理に雄蕊を引き離そうとしたために柱頭が少し裂けてしまいました。
この写真では、うまく柱頭部分にカミソリの刃が入って、自家受粉の様子と、柱頭の空隙が見られます。
写真 6.は開放花由来の果実、写真 7.は閉鎖花由来の果実つまり閉鎖果です。果実についてはこの論文ではほとんど言及がなく、その違いについても触れられていません。由来の異なるこの二つの果実はまだまだ膨らみますが、先端の花柱は片方は長く伸びたまま、もう一方は写真 5.のように曲がった花柱がほぼそのままの形でくっついています。この現象については前に書きました田中肇「スミレとタチツボスミレの受粉」(1979)にスミレV. mandshuricaの二種類の果実を並べた写真を提示して、以下のように書かれています。
「花柱の形は蒴果が裂開するまで変わらず、長いこん棒状の花柱をもつ開錠花の果実と容易に区別できる」
花柱の形以外でも開放花由来の果実では萼片が反り返るのに対して、閉鎖果ではほとんど反り返ることなく果実に寄り添い、付属体も反転しないようです。このことは無茎種・有茎種を問わず一般的に見られる事のようです。
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