スミレの閉鎖花(6) アリアケスミレ
アリアケスミレV. betonicifolia var. albescensの閉鎖花です。今春園芸店で1鉢買い求めたもので、すべてその1個体から採取しました。まず未熟な閉鎖花を解剖した連続写真です(写真 1.〜3.)。
雄蕊は5個のうち下弁側の2個だけが顕在していて、 写真 2.のように雌蘂を覆っています。葯隔付属物は乳白色で、葯はきれいな繭形をしています。柱頭口が広く開いているのが見てとれます。
次に成熟した閉鎖花の写真を掲げます(写真 4.〜6.)。
写真 5.は萼片を外したところです。2個の下側の雄蕊がぴったりと合わさってその葯隔付属物が雌蘂を覆っています。これらの雄蕊は開放花であれば距(脚柱)を持つはずのものです。写真 6.では、雄蕊を取り外して写真を撮ろうとしましたが、葯の中の花粉とそこから伸びる花粉管が柱頭口にくっつき剥がす事が出来ません。無理に引きはがそうとすると柱頭が引き裂かれてしまいますので、なるべく離れるように開いて写真を撮りました。
次に受粉が終わって子房の成長が始まった閉鎖花の連続写真です。萼片の先がすこし開き、さわってみると少し太って堅い感触があります。
論文にありますように、雄蕊は付け根からひき離されて柱頭にくっついたまま上部に持ち上げられています。
葯を大きく写した写真を比べてみますと、スミレV. mandshuricaでも同様ですが、葯の上端が裂開して大きく開放されています。
論文では「葯は柱頭に密着し、柱頭内から分泌する発芽促進物質の刺激によって花粉粒が発芽し、柱頭に密着した葯の壁を破って花粉管を伸ばし、柱頭の組織内に侵入するのであろうと考えられる。」と書かれてありますが、このあたりの機構をどのように理解すればよいのか、まだ私の観察でもはっきりとはつかめていません。
浜栄助「原色日本のスミレ」では「雄ずいのやくは孔裂開(porous dehiscence)で、やく室の先端の開孔部に、雌ずいの柱頭がくいこむ形で接し、むだなく完全に自家受粉が行われる状態になっている。」となっており、あたかも繭の上部がぽっかりと融けて無くなるかのように開くようなイメージなのかなと思っています。それほど、どの種においても開口部が写真 6.のようなきれいなラインを描いているように見受けられます。
| 固定リンク
「植物」カテゴリの記事
- スミレ科Violaceae(4)(2014.01.22)
- スミレ科Violaceae(3)(2014.01.15)
- スミレ科Violaceae(2)(2014.01.12)
- スミレ科Violaceae(2014.01.10)
- スミレの閉鎖花(33) まとめ(2013.11.10)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント