スミレの閉鎖花(24) フチゲオオバキスミレ(3)
以下15枚の写真は全て山草店から購入したナエバキスミレV. brevistipulata var. kishidaiの開放花を解剖したものです。2鉢を半年間観察しましたが、次から次へと蕾が上がってきて開放花を咲かせるのですが、閉鎖花は全く出来ません。もう11月だというのにまだ花をつけ、しかも不思議な事に花は咲けども果実が全く出来ないのです。自家受粉をしない系統なのかも知れません。これでどうやって増殖していたのか聞いてみたいところですが、今回はフチゲオオバキスミレの開放花の解剖が出来ませんでしたので、その代役としてオオバキスミレ系の閉鎖花と開放花の構造の違いを見るために提示しました。写真 1.〜5.までが1つの開放花の蕾の解剖連続写真。写真 6.〜11.は花が開いた時期のもの、写真 12.〜15.は逆に閉鎖花にも似た早い時期のもの。
フチゲオオバキスミレ(1)の半割写真にありましたように、開放花では雌蘂の柱頭はオオバキスミレ系に特有の姿をしています。花柱が伸びて柱頭は葯隔付属体の集合よりもぬきんでています。雄蕊にははっきりとした距ができています。また葯は半葯それぞれが2室に分かれ、花糸がきわめて短い。このように花弁・雌蘂・雄蕊の全てが閉鎖花と異なっています。
写真 5.は2つの半葯がさらに2室に分かれている事を見るために葯を輪切りにしたものです。
花が開いた段階のものでは、葯はすでに裂開していました。開放花においても閉鎖花と同じく縦裂開です。写真 8.がその様子を良く見せていますが、半葯を2室に分けていたしきりがなくなって1室になりそのあたりの壁が縦に裂けている様子がはっきりとわかります。以下、清水建美「図説植物用語辞典」の「葯の裂開」の記載を引用します。「葯は成熟すると裂開し、葯室内の花粉粒を放出する。裂開のしかたは何通りか知られている。縦裂longitudinal dehiscence もっともふつうな場合で、葯室の側壁が縦に裂ける。(中略)通常の場合は半葯の2個の胞子のう間の隔壁が破れて1個の葯室となり、その側面で縦裂する。」
写真 9.は雄蕊の背軸側の面を写したものです。
以下、未熟な開放花の蕾。
やはり雄蕊群は雌蘂よりも短く、柱頭口は完全に葯から遠ざけられています。写真 10.に見られるほど花柱の下部の首折れは深くないようです。柱頭もまだ完全には膨らんでおらず、花柱の長さも1mm程度ですので、雄蕊なども合わせて全体として、このあと1.5倍〜2倍くらいまで成長して完成形になるようです。
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