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スミレの閉鎖花(17) オオバタチツボスミレ

 有茎種のトップバッターはオオバタチツボスミレV. kamtschadalorum。写真 1.〜4.まで解剖しながらその都度写真を撮ったものです。写真の上部に写っているのは定規で黒いバーの間隔は1mm。今後もこれは同じです。

Img_2095 写真 1.

 雄蕊は2個、花弁はやや大きめのものが2枚、ごく小さいのが3枚見えていますがいずれも退化萎縮しています。

Img_2097 写真 2.

 雌蘂はいままでの無茎種と同様に花柱が180度曲がり、柱頭の形は単純でこれも無茎種と良く似ています。
 佐竹・伊藤「日本産スミレ属の分類学的研究 1.閉鎖花について」(1964)の観察のまとめで以下のように述べています。
 「有茎種の場合は、今までのべた無茎種についての事情とはかなり違ってくる。有茎種のあるものは、花の構成部分は、それぞれの開花にほぼ同様で、子房をとりまいて5個の花弁、5個の雄ずいがあり、花弁は無茎種のものよりもずっと顕著で、雄ずいは花糸が広く、短かく、葯は長大で葯隔も広い。ただ花柱だけは短かく、極端に屈曲して柱頭が広く大きい点が無茎種と同様である。(中略)これらのあるものは下弁に隣接する2雄ずいのみはつねに完全であるが、他の3個は生成しているけれども、平扁の膜状になったり、葯を欠いたり、葯が発達していなかったりしている。」

 私の観察でも特にタチツボスミレ系統などでは、無茎種と閉鎖花の構造が全く違っているという印象を持ちましたが、この点については今後順次この場で提示して行きたいと思っています。オオバタチツボスミレについては残念ながらこの1個しか解剖できず花弁が5個見えているということくらいしか述べる事が出来ません。

Img_2098 写真 3.

Img_2101 写真 4.

 閉鎖花の半割写真。

Img_1448 写真 5.

 以下の3枚の写真もすべて今年の鉢植えからのものです。上から順に閉鎖花・閉鎖果・開放花由来の果実。

Imgp7087 写真 6.

Imgp7020 写真 7.

Imgp6668 写真 8.

 佐竹・伊藤「日本産スミレ属の分類学的研究 3.有茎群の開花について」(1966)の摘要に興味深い指摘が書かれています。
 「5個のおしべのうち、上位の3個は下位の2個(脚柱をもつ)より早く熟し、3個のうちでも中央の1個がもっとも早く熟す。下位の2個はかなりの時間をおいて熟すが、この時期に前後してめしべの柱頭口から発芽促進液が浸出するようになる。このことから下位の脚柱を持つ2個のおしべの花粉粒が受粉に重要な役目を果たす可能性が推定される。第1報ですでに報告したように、閉花(cleistogamous flower)においては、下位の2個のおしべからでる花粉粒が自家受粉にあずかるが、他のおしべは退化して痕跡にとどまるか葯があっても雄性としての機能を失っているが、この事実も開花における受粉がおもに下位2個のおしべによるという推定を裏づけるものと考える。」

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