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スミレの閉鎖花(14) ミヤマスミレ

 栽培中のミヤマスミレV. selkirkiiの閉鎖花。写真 1.〜4.までが連続写真です。写真 2.では萎縮した花弁とおぼしきものが5個ついているのが見えています。

Img_2049 写真 1.

Img_2051 写真 2.

Img_2052 写真 3.

Img_2055 写真 4.

 写真 5.〜8.は10月10日に得られたもので、おそらく返り咲きの蕾ではないかと思われます。閉鎖花に比べてだいぶん小さくはなっていますが、以下の点でまったく違っています。完全な花弁が5枚ある(唇弁には距もある)。雌蘂の花柱はまっすぐ伸びて葯隔付属物の集合より顔をのぞかせている。柱頭はカマキリの頭状に近い形をしている。柱頭口はずっと小さい。雄蕊は花糸がごく短く、半葯は細長い繭形で、縦に2室に分かれている。下方に位置する2個の雄蕊の葯隔には距(脚柱)が飛び出している。また葯隔は広く、葯隔付属物も大きくて5個がまとまって環状に雌蘂を取り囲んでいる。
 上記の説明は佐竹・伊藤「日本産スミレ属の分類学的研究 2.無茎群の開花について」を参考にしながら私なりの観察結果を書いたものですが、開放花ではもう少し全体に大きくなるのかも知れませんが、ほぼ論文の記述通りの形態でした。開放花では虫媒のための構造が発達し、逆に閉鎖花では自家受粉に不必要な構造をぎりぎりまでそぎ落としてしまっています。

 佐竹・伊藤論文では研究に用いた35種類(無茎種23、有茎種12)のそれぞれ平均10個体について、全て閉鎖花を生じたと書かれています。他の科と違ってなぜスミレ属ではこれほどまでに開放花・閉鎖花という二型の花をつける機構が一般的なのでしょう。北海道のオオバキスミレ類では閉鎖花を全くつけない集団が見いだされています。速水将人・他「Intraspecific variation in life history traits of Viola brevistipulata (Violaceae) in Hokkaido」(2012)
パンジー類は閉鎖花をつけないとされていますが、国内の種で他に閉鎖花をつけない種はないのでしょうか。どのような遺伝的仕組みでこのような閉鎖花が作られるのでしょうか。疑問は尽きません。

Img_2503 写真 5.

Img_2505 写真 6.

Img_2506 写真 7.

Img_2507 写真 8.

 栽培下での閉鎖花と閉鎖果。

Imgp7045 写真 9.


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