« 2013年10月19日 (土) | トップページ | 2013年10月21日 (月) »

スミレの閉鎖花(13) マルバスミレ

 以下すべて栽培中のマルバスミレV. keiskeiの閉鎖花。写真 1.〜4.まで解剖連続写真。この閉鎖花では受粉にあずかる雄蕊が1個しかありませんでした。写真 3.にもう1個の未発達の雄蕊が写っています。

Img_2294 写真 1.

Img_2295 写真 2.

Img_2296 写真 3.

Img_2297 写真 4.

 最初の頃半割の撮影は写真 6.のように片方しか使わなかったけれど、途中から割った両方とも並べた方がベターではないかと思い、そうするようにしました。しかし、マルバスミレでは写真 5.のように受粉のすっかり終わったものしか撮れませんでした。

Img_1636 写真 5.

Img_1299 写真 6.

 未熟な閉鎖花の写真。今までに載せた無茎種に共通して葯の裂開と葯隔付属体の発色硬化とはある程度連動しているようです。乳白色のうちは解剖針の先でさわっただけでくっついてしまうのに対し、発色したものは乾燥した紙のようになって針がついても持ち上がってきません。

Img_2302 写真 7.

 下の写真は子房がかなり大きくなってきて、雄蕊が花糸の根元からとれ、二つとも枯れて柱頭にくっついたまま持ち上がっている様子。

Img_1714 写真 8.

 最後は鉢植えでの閉鎖花と閉鎖果。今年の7月5日の写真です。

Imgp7016_2 写真 9.

 鈴木進「原色すみれ」(1980)という本があります。当時の山野草ブームを背景に、すみれ栽培の参考書として書かれたものです。閉鎖花について次のように書かれています。

 「日本産のすみれ類の多くは、長日、高温となるとほとんど開花しなくなる。すみれ愛好者の多くの方方が経験されていることと思うが、蕾が上がってきたと喜んでいると、開花しないまま種子となってしまう(これを閉鎖花という)。反面短日下、低温では春以外でも開花(人為的に短日処理を行って、八月の第一週まで開花させた記録がある)するものが多い。」

 このことを実験で確かめてみたのが、今回のブログの初めに挙げた、酒井重樹「閉鎖花の形成における環境要因及びホルモンの影響」という論文です。ヒゴスミレとエイザンスミレを材料に温室や暗箱を使って長日・短日・高温・低温の条件を組み合わせて閉鎖花の形成率を調べたのです。それによりますと、短日・低温下では0%、短日・高温下では3%、長日・高温、長日・低温下では92〜100%という結果になりました。このことから酒井さんはこの2種のスミレの閉鎖花形成には温度は必ずしも必要条件ではなく、日長が決定要因になっていると結論づけています。

 私の写真の記録を調べて見ますと、早いものでは6月の10日前後というのもありますが、多くの種に閉鎖花が出来て撮影に忙しくなるのは、やはり春分の日をすぎてからでした。

続きを読む "スミレの閉鎖花(13) マルバスミレ"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2013年10月19日 (土) | トップページ | 2013年10月21日 (月) »