キュー植物園
今日はいきなりイギリスに飛んで、世界でもっとも有名な植物園、キュー植物園 the Royal Botanic Gardens, Kewを訪ねてみましょう。
標本データベースはここで検索します。
Violaで検索すると661件がヒットします。そのほとんどが標本の画像付きです。View full-size imageをクリックすると実物の1.2倍ほどに拡大され植物の細部ばかりでなく、さまざまな書き付けの解読も可能です。インターネットの一つの理想の姿が実現されていると感じます。
Viola・Japanでは20recordsがヒット。全て画像があります。同じ画像が重複しているのもあるので整理してみますと以下のようになります。種名の右は採集者、採集年月日です。
Viola arcuata Wright, C. 1853
Viola biflora Tschonoski 1865
Viola bisseti Bisset, J.
Viola brevistipulata Faurie 10/07/1892
Viola dissecta [Bunge]
Viola hondoensis Tschonoski 1864
Viola mandshurica subsp. nagaskiensis Oldham, R. 1862
Viola maximowicziana Maximowicz 1863
Viola phalacrocarpa Bisset, J.P. 04/1876
Viola phalacrocarpa Maximowicz 1862
Viola semilunaris Tschonoski Japan. 1866
Viola senamiensis Togasi, M.; Togasi S. 03/05/1952
Viola sieboldi Maximowicz 1863
Viola yezoensis Maximowicz 1861
このなかで北海道で採集されたものが3点もあります。
○Viola brevistipulata Faurie 10/07/1892
これはなんということでしょう。フォーリー神父が狩場山で採集したフギレオオバキスミレのType標本の一つが眼の前に現れました。 私は以前、探訪記その26「フギレオオバキスミレ文献逍遥 」でフォーリー神父のが1892年7月10日狩場山に登山し、黄色いスミレを採集し、やがてその標本を元にドイツのスミレ研究家 W. BeckerがViola brevistipulata var. laciniataとして記載したと書き印しましたが、まさにそのときの採集品の一つです。フォーリー神父の書いたメモも、ベッカーの同定用紙も貼られています。ベッカーさんはこれを書いた1927年の翌年の1月には突然亡くなってしまいます。さぞかしやり残したことがたくさんあっただろうと思います。
○Viola arcuata Wright, C. 1853 函館 ニョイスミレ
1953年の函館といいますとペリー提督率いる黒船が初めて日本にやってきた年ですが、リンゴルド隊長の指揮の元、随行のライト博士が採集したと書かれている青いラベルから見ますとその2年後の第二次遠征の時のものと思われます。このとき採集された標本の重複品がやがてキュー植物園に送られたのでしょう。
○Viola yezoensis Maximowicz 1861 函館 ヒカゲスミレ
ロシアの植物学者カ-ル・ヨハン・マキシモウィッチは函館が開港された直後の1860年に来訪し、一年ほど函館に滞在して助手として雇った須川長之助とともに周辺の植物を調査採集しました。このヒカゲスミレはその時のものなのですね。花から根の先までそろった美しい標本です。
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