日本のスミレ
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日本のスミレ―写真検索
著者:いがり まさし,高橋 秀男 |
1996年の4月、この本の初版が出版された時、私は飛びつきました。黄スミレの他には何も知らなかった私にとってこの本はまさしくバイブルのような存在になったのです。北海道内で撮影されたたくさんのスミレたち、その場所、そして撮影された日付けがまさに存在の証明でした。
著者のあとがきによれば山と渓谷社の川畑博高氏から「スミレで1冊やってみないか」と誘いを受けたのは1991年のことだったと言います。迷いながらも取材に走り出した91年、5月から6月にかけて半月ほど北海道内を巡っています。フギレオオバキスミレにはじまり、ムラカミタチツボスミレ(タチツボスミレとオオタチツボスミレの雑種)、エゾキスミレ、エゾノタチツボスミレ、シロスミレ、オオバキスミレ、ミヤマスミレ、ケエゾキスミレの写真を残しています。トカチキスミレやフギレキスミレの写真もこの年かもしれません。
翌92年夏、大雪山にジンヨウキスミレを写しています。
93年は北海道からの写真がありません
この本の42〜43ページの見開きに「知床・硫黄山のシレトコスミレ」と題する紀行文が載っています。それによれば、「はじめての時は、登るだけでへとへとになり、撮影するのがやっとだった。「もっと、いい写真を」と思って、2年後に訪ねたときは、猛暑のせいで花はほとんど終わっていた。」とあります。94年夏のシレトコスミレの果実の写真が載っていますので、92年にも知床に登っていたことが想像されます。また「羅臼岳から縦走の予定でテントをかつぎ上げた時は悪天で下山を余儀なくされた。」とありますので93年にもおそらく来られていたのでしょう。
94年は6月にもシソバキスミレ、エゾキスミレの写真を撮るために訪れています。
最初3年くらいで全国のスミレの取材を終える予定がついに5年目を迎えます。
95年に道内でオオバタチツボスミレ、オオタチツボスミレ、エゾノタチツボスミレ、サクラスミレ、アカネスミレ、エゾアオイスミレ、フイリミヤマスミレ、およびアイヌタチツボスミレ。アポイタチツボスミレもあるいはこの年に写したものかもしれません。そして7月に再び知床を訪れてシレトコスミレの写真を写されています。見開き2ページを30ほどの花をつけて飾った写真はこの時のものです。タカネタチツボスミレについては撮影日が書いていないのですが、紀行文から同じ日に写されたものだと思います。
そしてその二日後にはこんどは大雪山でエゾタカネスミレ。さらにその9日後、同じ大雪山でタニマスミレの写真を撮られています。初版の本の全ての日付けの中で一番最後の写真でした。見つけるのに大いに苦労されたのでしょうか。
2004年春、増補改訂版が出されました。初版以降の8年間に加わった新種を含む新たな知見が盛り込まれ、新しい写真も加わりました。
99年イブキスミレ。今まで北海道には分布しないと思われていたイブキスミレが発見され、その写真とともに解説も新たに加えられました。
また従来オオバタチツボスミレの高山型といわれてきたタカネタチツボスミレがアラスカやアリューシャンに知られていた別種とされ学名が書き換えられました。
また知床半島特産と思われていたシレトコスミレがロシアの択捉島にも分布することが判明しました。
増補改訂版に新たに加えられた、248〜249ページの「オオバタチツボスミレとタカネタチツボスミレ」、266〜267ページの「択捉島のシレトコスミレ」を読みますと、この北海道に関係する二つの発見に著者のいがりさんが直接関わっているらしい。
最近の著者は日本から世界のスミレへと羽ばたいているようです。その片鱗がこの本からも伺えます。
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